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Bambu Lab A1 mini を買ったので

この記事は mstdn.maud.io Advent Calendar 2024 の 11 日目の記事です。 昨日は ekishouTV さんの 買ってよかったもの 2024でした。

じらびのひとが 3D プリンターの話してたので、便乗して 3D プリンターの話をしようと思います。

背景

8月末、Bambu Lab A1 mini が定価が ¥52,800 のところセールで ¥39,800 になっていたたのを見かけて買いました。 まさかブラックフライデーセールで 3 万切るとは思わなかったけどな!

もともとうっすら 3D プリンターほしいな~とは思っていたんですが、購入の決め手になったきっかけは別にあります。はい、例によって(?) VRChat 関連ですね。 VRChat が SteamVR Input 2.0 に対応したことで、 VIVE Tracker 3.0 の背面にあるポゴピンの入力を VRChat 内のアクションにバインドできるようになりました。

./pogopin.jpg
VIVE Tracker 3.0 の裏面。上部の金属パッド部分がポゴピンと呼ばれている部分。内訳はプルアップ入力x4、出力x1、GNDx1

一般的に販売されているトラッカーベルトはネジで留めるだけの構造になっているものが多く、通常ポゴピンと接続できるような構造にはなっていません。 もし使うのであれば、現状ではユーザー製作の専用設計のアダプターを買うなり1自作するなりする必要があります(あるだけすごい)。

で、自作したくなったから買ったわけです。この話は完成したらまたしようと思います。

モデリング

ここから先は僕の作業環境の紹介がメインです。

3D CAD ソフトウェアは FreeCAD を使っています。 フリーで使える 3D CAD といったらまず出てくるのは Autodesk Fusion だと思いますが、なんとなく Autodesk に反旗を翻したくて……(?)。 ちなみに最近ついにバージョン 1.0 がリリースされました。めでたい。

で、今回は適当にデスクの天板に挟んで使うフックを作ってみます。天板の厚さ以外の寸法は完全にフィーリングです。

./modeling-1.png
フリーハンドで適当に直線部分を描く

まずはスケッチのうち挟む部分を作っていきます。連続直線ツールでそれっぽい形を書いていきます。このとき垂直・水平に近い状態で引くと自動的に垂直・水平拘束が設定されます(後述)。

./modeling-2.png
フックになる円弧部分も描いておおまかな形は完成

続けてフックになる部分を円弧で作ります。これで概形は完成したので、具体的な寸法を確定させていくわけですが……。

FreeCAD はパラメトリック CAD というジャンルに分類されるので、各部の寸法や位置関係をパラメーター拘束として決めていきます。 辺の長さ・2 点間の距離が何 mm であるとか、この辺は垂直・水平、あるいは同一直線上にあるとか、そういうような条件を一つ一つ入れていくわけですね。 これらの条件が過不足なく設定され、全ての点や辺の位置や長さが一意に定まった状態を完全拘束といいます。この状態になるように適切に入力します。

./modeling-3.jpg
完全拘束

これが完全拘束になったものです。画像を拡大してよく見ると長さや謎の番号(これらは他の要素のインデックスを指しているようです)が記入されているのがわかるかと思います。 拘束が足りない場合はもちろん、冗長であったり矛盾がある場合2はエラーメッセージとともに問題箇所の拘束が表示されるのでいい感じ™️に修正します。 この修正していく感じが最初はなかなかうまくいかなくて大変でしたね。

./modeling-4.png
押し出す

後は適当な高さ(完成形においては幅になる方向)に押し出してモデリングはおしまいです。

造形開始

ここから印刷、もとい造形に入ります。基本的には Bambu Studio というお仕着せのコンパニオンアプリがほぼ全部やってくれるので特に考えることはありません。

./studio-1.png
Bambu Studio の画面。現代を感じさせる UX をしている

ここに各種 CAD ソフトウェアからエクスポートしたモデルファイルをインポートして配置していきます。 僕は基本的に STEP 形式で出力しています。 STEP は 2D でいうところのベクター画像のようなもので、曲線を細かい直線の集合ではなくそのまま曲線として表現できたりするのがメリットといえます。

./studio-2.png
STEP 形式のインポート時に追加で必要な設定

が、Bambu Studio が内蔵のスライサー3が結局ポリゴンモデルを要求するので、インポート時に変換する必要があるようです。 上のウィンドウで設定しているのは許容誤差みたいなものです。2D でいうなら SVG→PNG 変換するときの解像度をどれぐらいにするかみたいなもので、これが小さいほど品質は高くなりますがポリゴン数は増えます。

./studio-3.png
プレート上に配置。他にもモデルをインポートして同時に造形することも可能
./studio-4.png
スライス実行後の様子。

スライス処理を実行します。造形に必要なフィラメントの量や ETA はもちろん、フィラメントの内訳まで出してくれて至れり尽くせりすぎる。 必要に応じてフィラメントの色を選んだりして(A1 mini は別売オプションで最大 4 色刷りまでできる)、データを送信します。

この送信、最初は普通のプリンターみたいに LAN 内で探索して直接送信するみたいなことだと思ってたんですが、なんとクラウド経由です。 プリンター側と Studio 側で同じアカウントにログインしておくといい感じにやってくれるみたいです。 Bambu 製品複数台持ちにも対応してるらしく、やる気がありすぎる……。

./studio-5.png
カメラ映像の一部は部屋が写り込んでいたので塗りつぶしてます

あとはのんびり待つだけです。カメラ付きなので応援上映ができます。

動作の様子

A1 mini は印刷前に色々なキャリブレーションを自動実行します。えらすぎか?

  • XY 軸特性の測定
    • プリントヘッドを動かしたときの反動で設置場所の台はけっこう揺れる。
    • 小刻みに振動して何かを測定することで、その反動の分を補正してプリントヘッドを動かすようになっているらしい。
    • これによって造形が安定するとのこと。
  • ベッドレベリング
    • 動画に写ってる動作。
    • プリントヘッドとベッドの距離を補正して浮いたり傾いたりしないようにしているんだと思う。
  • フロー調整
    • フィラメントの流速を調整して注入過剰・不足にならないようにしている。
    • このときに出るゴミがどうみても💩。

実際の印刷中の様子はこちら。メイン PC と同じ部屋に置いてあるので冒頭にかなり PC ファンの音が入っています。 A1 mini の規模がそんなに大きくないのもありますが、動作音自体は割と静かです。なんかノイキャンとかしてるらしいし。 夜中に動かしてても家族に怒られる心配がないので実家暮らし的にはかなり助かりますね。

感想(?)

A1 mini、言うなれば「体験の良い 3D プリンター」ですね。見た目がちょっとおしゃれ(本当に?)なのもいいですが、色々なところがちょっとずつ気持ちいい感じがします。 これを書いている 2024-12-08 現在も結局 3 万ぐらいでセールしているようなので、気になる方はぜひ。……いやそんな気軽に勧められるものでもないか……。


  1. 上記アプデ以降は VIVE Tracker に限らず Tundra Tracker 向けにも作られているようなのでけっこうホットな話ではあります ↩︎

  2. 例えば「全ての角が直角で向かいあう辺の長さがそれぞれ異なる四角形」というような形状は平面ではありえない ↩︎

  3. Slic3r のフォークらしいです ↩︎